皆さん、「人生会議」というものをご存じですか?何かちょっと難しそうな会という印象があるかとおもいますが、これは、皆さん自身、あるいは皆さんの大事なご家族(ご両親や祖父母など)が体調を崩されてこれからの生活が不安になられた時に、みんなで少し話し合いの時間を持ちませんかというものです。
数年ほど前から「アドバンス ケア プランニング(advance care planning)」というものが国内でも広がってきていましたが、昨年この概念の愛称として「人生会議」という言葉ができました。
皆さんは、例えば同居していたおじい様が急病で倒れられ、救急車で病院に運ばれて、これからどうしたらいいのだろうと悩まれた経験はないでしょうか。どのような治療を受けさせてあげたらいいのだろう、先生の説明は誰が聞いたらいいのかしら、退院したらどこで看てあげたらいいのか、療養にかかる費用は誰が払うのか、などなど決めないといけないことがいろいろと出てきますね。このように、万が一のときに備えて、日頃から、皆さん自身あるいは大切なご家族が、病気になった時の望みは何か、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分自身で考えたうえで皆さんの信頼する人たちと話し合うことを、「人生会議」と呼ぶようになりました。この話し合いは、もしもの時に治療やケアについて難しい決断をしなければならなくなった時に重要な助けとなります。今皆さんにはこのような前もっての話し合いはすぐには必要ないかもしれませんが、話し合いをしておけば、万が一皆さんが自分の気持ちを話せなくなった時には、皆さん自身の声を伝えることができ、ご家族の心の負担がいくらかでも軽くなるでしょう。
人生会議の進め方を大まかに紹介すると以下のようになります。
- ステップ 1:
- 皆さんご自身(あるいは対象となるご家族)の希望を書き出し整理してみる。
- ステップ 2:
- その希望をかなえるために協力してもらえる人が誰かを考えてみる。
- ステップ 3:
- 今現在お世話になっているかかりつけ医に質問してみる。
- ステップ 4:
- みんなで話し合う。
- ステップ 5:
- 話し合ったことを整理し書いておく。
ステップ 1: 皆さんご自身の希望を書き出し整理してみる。
病気になった時にどんなことを優先してほしいか、病気になったあとの生活の場所はどこを希望するか(できれば住み慣れた自宅でできるかぎり過ごしたい、など)、治療の内容について誰に病院の先生から説明を聞いてほしいか、などです。一度にすべてをきっちり決める必要はないとおもいます。思いついたときに書き留めていってはどうでしょうか。
ステップ 2:その希望をかなえるために協力してもらえる信頼できる人が誰かを考えてみる。
ご自身の子供様や配偶者の他に、以前からお世話になっているケアマネージャーさんや施設の職員さんなども候補にされたらよい場合もあるかとおもいます。
ステップ 3:今現在お世話になっているかかりつけ医に質問してみる。
これからの生活内容に大きく影響する病名やその治療について、あらかじめ質問したいことをメモしておいて、診察の時に少しずつ教えてもらう、あるいは事前に面会予約をとってから訪問し説明を聞くといいでしょう。ご家族と一緒に受診し説明を聞くのもいいかもしれません。
ステップ 4:みんなで話し合う。
ご自分の希望や考えを、ステップ2で選んだ他のキーパーソンに聞いてもらい、皆さんにできるだけ正確に理解してもらいましょう。ご家族のご意見を聞いて、希望事項をより実現可能なかたちに修正することも大事かもしれません。
ステップ 5:話し合ったことを整理し書いておく。
ノートなどに話し合って決まったことを書き留めておき、いつでも見ることができるようにしておきましょう。最近ではあらかじめ書き込む欄が印刷された冊子などもあるようです。希望事項を変更したい時は、キーパーソンに早めに伝えるようにしましょう。何度でも書き直してよいとおもいます。
病院を退院するときにおこなわれる退院支援カンファレンスの記録や、施設でのサービス担当者会議の記録などもあわせて保管しておくとよいでしょう。
万が一の時に、皆さんご自身もご家族も余裕をもって対応できるように、またかかりつけ医の先生などともスムーズに打ち合わせができるように、日頃から早めに準備ができているとよろしいかとおもいます。
参照文献など 1) 厚生労働省ホームページ 医療→「人生会議」してみませんか 2) 佐藤南斗 アドバンス・ケア・プランニングとは? 日本医事新報 No.4960 p.8-9