逆流性食道炎』という病気をご存知でしょうか? 前日に夕食が遅くなり、それも脂っこいものを食べた翌朝に、胸のあたりに何とも言えない不快感が出現することがあります。これは胃酸が食道内に逆流することにより食道に炎症が発症したためで、そのような状態を『逆流性食道炎』といいます。
症状は“胸やけ”が有名ですが、それ以外に“胸がしみる”、“胃酸が上がる”、“口に苦いものを感じる(呑酸)”、“胸が痛い”、“飲み込みにくい”、“おなかが張る”、“よく咳込む”などの様々な症状がみられます。特に慢性的な咳が継続し、胸部レントゲンで異常を認めず、耳鼻科での診察においても異常がない場合は、『逆流性食道炎』が隠れている可能性があります。
本疾患は比較的若年層の男性、もしくは高齢者に多いとされています。前者はピロリ菌がいない(ピロリ菌陰性者:胃酸がでやすい)人であるため、後者は亀背などの腰が曲がった人に起こりやすいためです。現在ピロリ菌陽性者で内視鏡的に胃炎と診断された人は、ピロリ菌の除菌療法が保険適応となっているため、ピロリ菌陽性者は徐々に減少しています。その一方で、ピロリ菌陰性者である胃酸がでやすい人が増加しており、『逆流性食道炎』の患者さんは増えてくると言われています。
治療に関しては脂っこい食事、甘いもの、アルコール摂取等を控え、さらに食後すぐには横にならない等の生活習慣の改善で、症状の緩和が期待されます。それでも症状が継続する場合は薬物療法を導入します。薬物療法はまず1-2か月間治療薬を継続していただき、以後は投与量を減量継続もしくはオンデマンド療法(胸やけ症状があるときだけ内服)をするのが一般的です。
なお、診断には一度は上部消化管内視鏡検査(胃内視鏡)を受けることが適切ですが、内視鏡で所見のない(発赤のない)場合もありますので、まずは上記のような症状が出現したら、かかりつけ医に相談してください。