昔からヒトは見えないもの見ようと様々な工夫を凝らし、遠くのものを見るために望遠鏡を、非常に小さいものも見るために顕微鏡を発明しました。医学の分野でもレントゲン博士がX線を発見し、1895年それまで外からは見えなかった手の骨のX線写真の撮影に成功しています。以来現在に至るまでX線を用いた検査は画像診断の中心で、“レントゲン”はその代名詞ともなっています。(“レントゲンとってきましょう”のように・・)
現在までに様々なX線診断装置が開発されていますが、最も画期的であったものの1つがCT(コンピュータ断層撮影装置)です。CTは1973年に開発され、今まで間接的にしか分からなかった頭蓋内病変を鮮明に、まるでそのまま頭を輪切りにしたように映し出すことが可能となったのです。そしてどんどん改良されて全身をより短時間できれいに撮影できるようになっています。
また、CTに遅れること約10年で、X線を使わず、磁石とラジオ波を用いて体を様々な方向で断層撮影できるMRI(磁気共鳴画像)装置が臨床応用されました。
この他にも超音波を用いた画像診断機器、放射性同位元素を用いたガンマーカメラやPETといった画像診断機器が開発され臨床の場で使われております。
最近のテクノロジーの進歩に伴い最新の画像診断機器の性能は飛躍的に進歩しています。多列検出器型CT、高磁場MRIなど、より早くよりきれいに撮影でき、今まで見えなかったものが画像化できたりと、まだまだ進化の途中です。近年この地域でもこのような最新画像診断機器を導入する病院がでてきております。
では、このような最新画像診断機器は我々の健康にどのように役立つのでしょうか?
【高磁場MRI】磁石の力が3T(テスラ)という高磁場のものが今や一般病院にも導入され、7Tのものも臨床の場で使われ始めています。使用する磁石が強くなるとより細かい描写ができるようになったり、短い時間で撮影できたり、今まで表現できなかったものを画像化できたりと、MRIの応用の可能性がどんどん広がっています。
なかでもMRA(MRI装置を用いた血管撮影)の解像度は飛躍的に向上し、造影剤を使用しなくても、今まで見えなかった細い血管の病変や小さな動脈瘤(出血の原因となるコブ)を見つけることができるようになり、働き盛りを襲う恐ろしいくも膜下出血を未然に防いだり、脳梗塞を発症する前に血管の異常を発見することが比較的簡単に行えるようになりました。つまり、脳卒中の発症予防にとても役立つわけです!しかも今までより短時間で検査できることでじっとすることが苦手な人でも気楽に検査が受けられます。そのほかにも、高磁場MRI装置で初めてできるようになった撮像法も脳の病気の診断治療に役立っていますが、これらについてはまたの機会にしたいと思います。
【多列検出器型CT】初期のCTは検出器が1つで一回の照射で1つの断層画像しか撮れませんでしたが、その後検出器を複数並べることで一度に複数の断層像が撮影できるようになり、最新の320列のタイプでは、約16cmの長さを一気に撮影でき、例えば頭部なら僅か1回のスキャン・たったの0.35秒で検査が終了します。これなら今まで動いて撮れなかった子供さんや、どうしても動いてしまう患者さんでも検査できます。また造影剤は必要ですが、血管撮影をあたかもカテーテル検査で行うのと同様に動脈から静脈までの時間的な流れを見ることが簡単にできます。この方法は特に心臓の血管(冠動脈)を見るのにも有用で、今まで大変だった心臓カテーテル検査に代わって、ごく簡単に冠動脈の状態を調べることができ、心筋梗塞の診断だけでなく、発症予防のための検査としても広く使われています。
また、X線を使う検査ですので、従来の約1/3の線量で撮影可能なのも健康に対する悪影響を少なくでき、とても有利な点です。
このように、最新の画像診断機器は、近年増加傾向の脳卒中や心筋梗塞といった、一刻を争う急性疾患の迅速な精密検査、的確な診断そして最良の治療へのスピーディーな流れをつくることができるだけでなく、発症前に検査を行うことでその予防、つまり健康維持に大いに役立つ装置と言えます。また被曝線量の低減など健康への配慮もしっかりとしており、より安全に、必要なときには気軽に利用して頂ける身近なものとなっています。
ご興味がある方はどうぞ最寄りの医療機関でお気軽にご相談ください。