ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)を御存知でしょうか。ピロリ菌は不衛生な井戸水を飲んだり、感染者からの口移し行為などで、主に5歳くらいまでに感染し、胃の中にずっと住み続けます。症状がなく感染が続くことで胃炎が進行し、萎縮性胃炎(胃の粘膜が薄くなる)になり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍も引き起こします。一番の問題は胃炎の進行で、胃がんが将来発生する危険があることです。日本で発見される胃がんの99%がピロリ菌感染によるものであるとわかっています。
ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃炎や潰瘍は治り、再発することもなくなります。胃がんも予防できることがわかり、特に感染して間もない中高生で除菌することで胃がん予防効果がより確実になると考えられています。
2013年ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適用となり、2014年には世界保健機構(WHO)が、胃がん対策としてピロリ菌検査と陽性者に対する除菌治療を行うよう勧告を出しました。
そこで、三豊市・観音寺市と医師会が協議を重ね、2018年度から三豊市・観音寺市に在学する中学3年生の生徒のうち、検査を希望し、本人と保護者が同意した方に対し、ピロリ菌検査が行われることになりました。具体的には内視鏡(胃カメラ)や採血をせずに行える、尿検査を行います。この検査による副作用などはありません。学校検尿のときに持参される尿を使って検査を行います。尿検査の正確性は100%ではありませんが、陰性の場合には、ほぼピロリ菌感染はなく、陽性の場合は約35%が偽陽性(本当はピロリ菌に感染していない)です。検査の結果は、直接保護者に郵送します。(他の生徒や保護者、学校に結果が知られることはありません)。陽性の方はピロリ菌に感染していない可能性も十分にありますので、精密検査を受けることを強くお勧めします。精密検査は尿素呼気検査を医療機関で行います。この検査は成人の除菌治療の際に最も行われている検査で、信頼性が高く、胃カメラや採血などの負担がない検査です。精密検査と陽性が確定した場合の除菌治療の詳細については陽性者に別途ご説明致します。なお、この検査や治療に関する費用は全額両市が負担します。
ピロリ菌に感染していても症状がないため、感染に気づくことができません。また、現在のところ、成人に対して胃カメラを行い胃炎と診断された場合のみ保険診療で検査が受けられるため、お子様には検査の機会がありません。痛みや副作用の心配のない尿検査ですので、身体的な不利益はありません。ピロリ菌を発見し除菌できれば、将来お子様が胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃がんになる可能性をかなり低くすることができます。また、お子様にピロリ菌が見つかればその父母、祖父母などの御家族に感染者がいる可能性も高くなりますので、御家族のピロリ菌感染の検査、治療にも継げることができると思われます。三豊観音寺地区の胃がん撲滅のためにも、対象のお子様は是非この検査を御利用下さい。